投稿

9月, 2020の投稿を表示しています

川島雄三「しとやかな獣」雑感

イメージ
 川島雄三「しとやかな獣」1962年公開 様々な斬新・実験的趣向満載の異色作。Nouvelle Vagueの趣。 一風変わった場所にカメラが置かれているショット多数。 90年代半ばに多分NHK-BSで放送されたのを見た記憶があるが、ほぼ全編マンションの部屋で展開する事と、和服の年配の男性が「こんな鳥かごみたいな所にこもっていられない」みたいな事を言った事しか覚えていなかった。見ていないに等しいレベルの記憶w 「しとやかなけもの」だと思いこんでいた(正解は「…けだもの」)。 和服の年配の男性は伊藤雄之助、wikiの生年月日が正確なら公開当時の年齢は43歳、劇中設定は「もうじき55」だが、2020年の感覚で見ると少なくとも60歳以上に見える。上記の曖昧な記憶は、息子(川畑愛光)に「パパは金儲けは何やってもダメなんだからウチの中でじっとしてりゃいいんだよ」と言われて「小鳥じゃあるまいし、こんな狭っ苦しい所に毎日じっとしておれっかい」と返すのが正解だった(13分頃)。 長男が使い込んだとされている金額は100万円、長男の給料は1万2000円。 2020年の貨幣価値換算なら2000万〜3000万程度?(15分頃) 徹頭徹尾クールな悪女の若尾文子。 最初の登場シーンでは全く話さない。 オープニングで使われた能のような劇伴は何度も繰り返し印象的に用いられている。 狂乱のダンスシーン、白い階段で心境を告白するくだり(2回)、ほか。 全編に渡って構図や展開はオフビート気味だが、その中でも際立つヘンなシーンは、姉と弟が狂ったような夕焼けの赤い部屋の中で踊り狂うシーン(31分頃)。過去も未来も関係性も関係ないと言わんばかりの刹那感炸裂。このシーンを全く覚えていないのは我ながらヒドいw 半分寝ながら見ていたのだろうか?w 妙に印象に残る飲食シーン。 コーヒー、ビール、メロン、信州そば(1日目)。 デンマークのキャビア(数日後)。 部屋の間取りは1LDK(推定12畳のLDK、推定6畳の和室)。 ◎LDK ◯小さめのテーブル、椅子2脚 ◯ソファ ◯白黒テレビ ◯大きなステレオ ◯双眼鏡(ステレオの上の壁) ◯茶色の洋服ダンス ◯黒いキャビネット(中に洋酒多数、上にダンボール数箱) ◯ダイニングテーブル、椅子4脚? ◯カウンター収納(キッチンとの境目、両側から開けられる扉、カーテン、  ジュース

吉田恵輔「麦子さんと」雑感

イメージ
吉田恵輔「麦子さんと」2013年公開 劇中で起こる悲劇(母親の死)に関してヒロイン堀北真希が感傷的になりすぎず、 この手の話にありがちな号泣シーン&それっぽい感動的な劇伴がなかった事に好感。 その意味では、葬式で兄・松田龍平が泣くシーンは、もっとさり気なく見せるか、 或いは堀北真希は見ない(観客だけが見る)方が良かったかも。 ストーリーもキャラクターも類型的と言えば類型的なのだが、 全体的になんとも言えない味わいがある。 祭りのカラオケで歌わないアンチクライマックス。 淡々とした話を堀北真希の捉えどころがない魅力と田舎の光景が支えている。 ラストの「赤いスイートピー」で動かされた要因は、ある種の感傷ではあるのだろうが、 的確に言語化できない。 堀北真希プロフィール

大林宣彦「廃市」雑感

イメージ
 大林宣彦「廃市」1983年公開 ストーリーよりもムードを楽しむべき作品。 平日昼間の客が少ないミニシアターでひとりで観てどっぷりと浸りたい。 公開当時にそれこそ文芸地下あたりで観た記憶があるのだが、やたらと運河?水路?が出てきた事以外は何も覚えていなかった(ある意味間違ってはいない記憶w)。 青春(夏)の記憶の美しさ・儚さ・ある種の残酷さ。 例によってはっきり特定できない劇中年代。 実際にロケを行っていたのは1983年なのだろうが、もっと全然昔にも見える。 ウォークマンの若者、テクノカットの若者は多分登場しなかった。 狂言回しの主人公・山下規介の棒演技は多分確信犯的演出。 その数十年後の語り(大林宣彦)は時にフェイドアウト気味で聴きとり難く。 一見朗らかなで清純なお嬢様の小林聡美、いつもより高めの声のトーン。 髪型・メイク・衣装・ライティングなどいろいろ頑張ってはいるのだが、正直、もっと鮮烈な美少女だったら<忘れられない夏>というテーマはより強まったのではないか?という気がしないでもないw 船頭・尾美としのりの忍ぶ恋心(身分違いの恋)、 他の大林宣彦作品でも同じような話があった気がするが、思い出せない。 尾美としのりの視点で再構成すると、どこか残酷な物語が浮かび上がってくる。 最終的には同じ身分の女性(旅館のお手伝いさん)を選ぶしかない? 大林宣彦監督作品 小林聡美 プロフィール 廃市 作品データ

サッカー雑感

  2020.09.13 札幌3-4浦和。                     2失点目、ハイラインの裏を簡単に使われてあっさり失点。                戻ったDFの1対1の弱さ(最悪ファウルで止めなければならない)。           GKとCBの能力不足。                                こういう失点を防げないならハイプレスに行くなよ、と言いたくなる失点。

見延典子「もう頬づえはつかない」読書メモ

イメージ
見延典子「もう頬づえはつかない」講談社文庫 1981年発行 起こっている出来事は映画とほぼ同じだが、映画が曖昧に描いている部分(主に心情)が細かく描写されているので、肌触りはそれなりに異なる。映画はメインの3人をあえて曖昧に描いているようだ。 映画は恒夫(森本レオ)のどこがそんなに好きなのか明確に語っていないが、原作は明確にセックスに魅力を感じている事を語っている(P34〜35)。この部分の<川本さんがいるのに…>(部屋に人がいる状況)はかなり重要な要素に思えるが、映画では描かれていない。 原作の恒夫(森本レオ)には学生運動くずれという設定はなく、酒とケンカとバクチが好きな結構普通の男だった。原作にある内的告白(P99)をばっさり切ったのは正解。それにしても映画の恒夫は大学生には全く見えない。 映画では橋本くん(奥田瑛二)の方が顔がマシなだけマシなのでは? と思えてしまうが、原作では橋本くんのルックスは<類人猿>で全く好みではないという描写。つまり原作は、基本的には、顔もセックスも好きな本当に好きな人(不在)と、顔もセックスも特に好きではない普通の男(そばにいる)の古典的三角関係(理想と現実とも言う)。 橋本くんとのセックスに関する特筆的な描写はP60(都合が良い男)。 原作を読んだ上で改めて映画をざっと眺めると、 心理描写が曖昧な映画の描き方も悪くない。 ※以下は映画のみ(原作にはない) ◯まり子の大学の友人      ◯橋本くんの吉野家アルバイト ◯身体障害児寄付(詐欺?)                   ◯伊丹十三が刺される  ◯1000円頂戴の少女 ◯橋本くんと恒夫の直接対面  ◯恒夫の30万円 ◯まり子の父親 

「マインドハンター」雑感

イメージ
 「マインドハンター」Netflix シリーズ1(全9話)シリーズ2(全9話) 非常に見応えがある重厚な大人のドラマ。 「ハウス・オブ・カード」と同様に映像と台詞が素晴らしい。 毎回短編映画並みの満足感、もしくは約15時間の大長編映画を18分割して見ているような感覚。週末の一気見がお勧め。 FBI行動科学課(FBI行動分析課の前身)の発足。                   方法論の試行錯誤。 分類する為の用語の考案(シリアルキラー、など)。 いかにも頭の良い人が考えているような台詞の数々。説明台詞皆無。                              感情移入しやすい、単なる良い人はひとりも登場しない。                ダークで曖昧な着地点。 ①前例がない事をやろうとすると組織で孤立・衝突する ②仕事と私生活の充実はハイレベルでは両立しない                   現実を舞台にしたリアルな作品でたいてい成立する2大法則が底流を形成。 洗濯室にいる猫と仲良くなると思ったら……。 デヴィッド・フィンチャー製作総指揮。 参照作品  映画「羊たちの沈黙」                            ドラマ「クリミナル・マインド FBI行動分析課」 David Fincherプロフィール

David Robert Mitchell「アンダー・ザ・シルバーレイク」雑感

イメージ
 David Robert Mitchell「アンダー・ザ・シルバーレイク」Amazon 失踪した隣の部屋の女性を追ううちに次々にヘンな事が起きる。日常生活のすぐそばにある怪しい世界。 ヒッチコックとリンチのテイスト(音楽の使い方はヒッチコック風)で、中盤までは非常に楽しめたが、後半はなんとなく謎解きの為の謎解きな感もあってダレ気味。もっとリンチ風な意味不明なトンデモ世界を期待したが、中心の話に関してはちゃんと説明される。約135分はそもそも冗長。 狙ってスカしているかもしれないが、クライマックスに向けて物語が加速するような感じは殆どない。 けっこう仮面(仮面で全裸の女)の話、自殺(?)した作家の話、貯水池で狙撃された話、などいくつかの話は説明されないまま終わる。 髪の毛もじゃもじゃ・無精髭の主人公、Andrew Garfieldと全く気づかずに見ていた(「ソーシャル・ネットワーク」「沈黙」ときちんとしているキャラの印象が強かった)。 失踪する隣人のRiley Keoughは昔ながらのヒロインタイプでなかなかattractive。セクシー全開の「ガールフレンド・エクスペリエンス」とは髪の毛と瞳の色が違うので全然別人の印象。 Andrew Garfieldプロフィール

「ガールフレンド・エクスペリエンス」雑感

イメージ
 「ガールフレンド・エクスペリエンス」Amazon 1時間1000ドルの超高級エスコートガール。 ロースクールに通い、法律事務所でインターンシップを受けている主人公が、友人に誘われてアルバイト感覚で軽いノリ(のように見える)でエスコートガールの仕事を始める。 中盤で身バレして、お決まりの転落人生物語かと思いきや、明確な白黒はつけない所に着地。中盤から少々ダレていたが、主に画の魅力で惰性で見てしまう。 ハードボイルドなムード、暗めの画(逆光のショット多い)、硬質な会話。 正統派西欧美人の ヒロイン・ライリー・キーオ、 見事な脱ぎっぷりはエロティックなドラマの芳醇化に寄与しているが、5〜6話も見ると見飽きて、ヌードの有り難も薄れてくる。やはり僕は正統派美人タイプよりファニーフェイスの方が好みのようだ。 ライリー・キーオは wikiによると エルヴィス・プレスリーの孫。 製作総指揮 スティーブン・ソダーバーグ。

大林宣彦「ねらわれた学園」雑感

イメージ
大林宣彦「ねらわれた学園」1981年公開 80年代半ばにテレビで放送された時になんとなく眺めて、学園青春モノという骨格と、クライマックスのチープすぎる特撮から、「月曜ドラマランドみたいな映画だな〜」という印象を持っていたが、今回初めてじっくり見て、ルックは一見確かに月曜ドラマランド風な部分もあるが、独特な音楽の使い方やカメラポジション(ローアングル・アオリ)に大林の変態性(ホメ言葉)が垣間見える。 薬師丸ひろ子が水を飲む唇の超クロウスアップは5分頃。 全体的には大林宣彦監督作品にしては比較的普通。 ストーリーがこれだけ突飛だと、語りや編集でそうは遊べない、という事か?  クライマックスの薬師丸ひろ子(エスパー)と峰岸徹(地球征服を企む金星人?)の戦いの印象が圧倒的。いまのアベンジャーズ的感覚で見るとあまりにアナログでチープな特撮。 薬師丸ひろ子プロフィール 高柳良一プロフィール 大林宣彦監督作品 。

宮部みゆき「きたきた捕物帖」読書メモ

イメージ
 宮部みゆき「きたきた捕物帖」2020年発行 人物造形、人物配置は悪くない。語りが少々冗長。 4番目の話は説明的で、最後の謎解きがあらかじめ楽屋で語られているので、いざめかしこんで出張った場面が少々拍子抜け。ここは、どんなにベタでも(京極夏彦的強引な手法で?)関係者全員集合して尋問、で締めて欲しかった。 主人公は16歳にして堅物なのか色恋沙汰は全くなし。 帯によると宮部みゆきの他の作品とリンクしているようだ。 宮部みゆきプロフィール