見延典子「もう頬づえはつかない」読書メモ

見延典子「もう頬づえはつかない」講談社文庫 1981年発行

起こっている出来事は映画とほぼ同じだが、映画が曖昧に描いている部分(主に心情)が細かく描写されているので、肌触りはそれなりに異なる。映画はメインの3人をあえて曖昧に描いているようだ。

映画は恒夫(森本レオ)のどこがそんなに好きなのか明確に語っていないが、原作は明確にセックスに魅力を感じている事を語っている(P34〜35)。この部分の<川本さんがいるのに…>(部屋に人がいる状況)はかなり重要な要素に思えるが、映画では描かれていない。

原作の恒夫(森本レオ)には学生運動くずれという設定はなく、酒とケンカとバクチが好きな結構普通の男だった。原作にある内的告白(P99)をばっさり切ったのは正解。それにしても映画の恒夫は大学生には全く見えない。

映画では橋本くん(奥田瑛二)の方が顔がマシなだけマシなのでは? と思えてしまうが、原作では橋本くんのルックスは<類人猿>で全く好みではないという描写。つまり原作は、基本的には、顔もセックスも好きな本当に好きな人(不在)と、顔もセックスも特に好きではない普通の男(そばにいる)の古典的三角関係(理想と現実とも言う)。

橋本くんとのセックスに関する特筆的な描写はP60(都合が良い男)。

原作を読んだ上で改めて映画をざっと眺めると、
心理描写が曖昧な映画の描き方も悪くない。

※以下は映画のみ(原作にはない)
◯まり子の大学の友人     
◯橋本くんの吉野家アルバイト
◯身体障害児寄付(詐欺?)                  
◯伊丹十三が刺される 
◯1000円頂戴の少女
◯橋本くんと恒夫の直接対面 
◯恒夫の30万円
◯まり子の父親 












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