「アリー スター誕生」雑感と妄想


「アリー スター誕生」
Bradley Cooper演じるキャラクターはなぜ死を選んだのか?

音楽映画として「ボヘミアン・ラプソディ」に勝るとも劣らない素晴らしい出来。「ボヘミアン・ラプソディ」はクライマックスのLIVEパートで<音楽(ロック)の根源的パワー>が問答無用で圧倒的に炸裂していて、音楽のパワーに関しては「ボヘミアン・ラプソディ」に軍配を上げるが、深みと解釈のしがいがあるストーリー・物語は「スター誕生」の方が勝っていて、総合的には甲乙つけがたい。

Lady Gaga主演のリメイクの音楽映画、程度の予備知識で挑んだこの作品、単純なボーイミーツガール&サクセスストーリーかと思って観ていたら、Bradley Cooper演じるメンターが重層的で良い意味で裏切られた。Cooperは登場時点で既に功成り名遂げた有名歌手で、当初はGaga演じる歌手志望の女性の完全なるメンターなのだが、Gagaはあっという間に売れてしまい、次第に冒頭から示されていたCooperのモンダイ(アルコール中毒)が浮上して来て、「Gagaに出会った事によってCooperがアル中地獄から救われる話に着地するのかも?」と期待を持たせるものの、やはり悲劇的に終わる。映画の原則から言えば、ボーイミーツガールの形式で始まって、出会ったふたりが開始15〜20分であっさりセックスしてしまう作品は、悲劇的な地点に着地せざるを得ない。

Cooper演じるキャラが<抱えていたもの>(自殺の原因)は何だったのか?
こういう重層的なキャラクターの場合の常として、「本当の事を話しているとは限らない」という問題があるが、それは一応置いておいて(本当の事を言ってる事にして)、殆どの話が父親がらみ(Gaga側の話も父親がらみの話が多い)なので、父親に関する何かであるのは間違いない。決定打は、酔った挙句の大失態(Gagaの授賞式のステージ上で失禁!)を悔いるシーン(多分最重要シーン)で「君(Gaga)の父親の前で…」と言った瞬間に泣き始めた事。

僕が想像(補完)した話は、
◯父親が酔っぱらいでだらしない男だったのは本当
◯父親がいろいろ夢を見て成功できなかったのも本当
◯周囲の誰も認めてくれなかった時点で父親だけはCooperの音楽の才能を認めてくれた
◯音楽で成功した姿を父親に見せたかったが、父親はその前に死んでいるので、この願いは永遠に叶えられない
◯この絶対に叶わない願いがCooperが抱えていた解決不能の問題
◯Cooperは酒を大量に飲んで前後不覚になった時だけ父親と繋がっている気がして幸福感を感じる事がてきたが、治療を受けて酒を飲まなくなった事で逆に生きるよすがを失って、悲劇的な結末を選んだ

これは鑑賞直後に浮かんだ感想なので、ある時点までは父親の代役を果たしていたかもしれない兄との関係性も含めて、もう一度じっくり観直したら、全然違う感想になるかもしれない。例によって重要な何かを見落としているかもしれないしw

「ボヘミアン・ラプソディ」のクライマックスのLIVEシーンほどでないが、LIVEシーンの
Gagaにはあっという間に持っていかれる。Gagaがそれほど好きではないという人でも、Gagaの歌の才能はホンモノ、という事は否定できないと思う。

これが初監督作品とはとても信じ難い出来栄えで、このままコンスタントに監督していけば、Bradley CooperはClint Eastwoodのような存在になる気がする。

※19年3月3日追記
日刊スポーツ19年3月3日号によると、この作品はClint Eastwoodがビヨンセ主演で監督する予定だった(ビヨンセのスケジュールの都合で中止)

Lady Gaga プロフィール
Bradley Cooper プロフィール



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