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3月, 2021の投稿を表示しています

Jean-Marc Vallée「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」雑感

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Jean-Marc Vallée「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」 2017年公開 Netflix配信中(2021.03.14現在) 冒頭の交通事故以降、 現実とは思えない奇妙な出来事が延々と続く。 実際は死んでいる?  死ぬ瞬間に見る永い夢?  実際は集中治療室で治療中?  いずれにしても、夢のようなものでは? と思いながら見続けるが、 真相は明かされずに終わる。 怪作。 原題「Demolition」は「解体」の意。

市川崑「穴」雑感

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市川崑「穴」1957年公開 Amazon配信中(2021.03.13現在)※シネマコレクション by KADOKAWA ハイテンポで進行するコミカルな犯罪劇。 複雑で判りにくい騙し合い。 もともとの計画からどの程度逸脱しているのか、 あるいは船越英二は最初から計画していたのか、 よく判らなかった。 きちんとノートを取って分析すれば、 結構矛盾があるような気がしないでもない。 台詞で説明して画で見せない重要シーン多数。 替え玉殺し、船越英二の2500万円入手、など。 当時の渋谷の実景ショットがいくつかあるが、 現在の渋谷のどのあたりなのか判らなかった (三和銀行の看板が確認可能)。 ヒロイン京マチ子の様々なメイク・ファッションは、 できればカラーで見たかった。 穴 作品データ

Greta Gerwig「レディ・バード」雑感

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Greta Gerwig「レディ・バード」2018年公開 ハイテンポでリズミカルな編集。 母と娘の関係、高校時代の女性同士の友情。 高校時代の女性の友情はパートナーを変えて 「ブックスマート」に繋がってまた別の形で描かれる(同じ女優)。 とにかくテンポが良い。 現実世界の普通の人の話は90分もあれば充分語れるという良い見本。 凡庸な監督なら100分〜120分かけそうな話。 2003年はあっという間に秋になる。 母親側から見るとずっと隣にいる筈だった娘にいきなり飛び出される話、 主人公側から見ると自分の意思で大胆に故郷(家族)から飛び立つ話 (冒頭のクルマが象徴) 全体の流れから浮いているように見える中絶に関する特別授業(53分頃)、 このシーンに多分監督が密かに伝えたかった何かがある。 高齢で主人公を授かった母親も中絶を考えた可能性。 いま生きている全ての人間は中絶されなかった結果として生まれて来た。 主人公と父親を空港に残して母親がひとりでクルマを運転する(80分頃)。 その胸に湧き上がっていると思われるこの18年間の想い出と哀しみ。 昨日の事のように思える誕生から18年間。 「6才のボクが、大人になるまで。」の絶叫と対照的な静かな涙。 急性アルコール中毒で診断される主観ショット(85分頃)、 覗き込む看護師とまばゆい光は二度目の誕生(気付き)を想像させる。 主人公はその足で(多分初めて自分の意思で)教会に行く。 生まれて来る奇跡。 いつかは必ず来るその時の哀しさ。 そのふたつの間の永い瞬間の全て。 たとえケンカ別れになっても、 出会わないよりは出会う方が良い。 レディ・バード 作品データ

庵野秀明「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」雑感

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庵野秀明「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」2021年公開 一言で言えば少年が大人になる話。 碇ゲンドウに関して言えばちゃんとした大人になりそこねた話?  碇ゲンドウに庵野秀明自身がある程度取り入れられていると想像する。 前回劇場版と同様に最後は実写。 マンガ版のラストに似たテイストの終わり方。 Qと同様に、今作も主にリツコが口にする<専門用語>の意味はさっぱり判らない。 仲間内だけに通じる言葉を使って社会に対して壁を作るオタクのごとく。 ATフィールド=OT(オタ)フィールド!? <専門用語>の意味は判らなくても画の迫力とキャラの感情で魅せる。 これはアニメとしても映画としても大正解。 言葉で説明可能なストーリー・設定なら小説で展開すれば良い。 26年前のTVシリーズから今作まで意匠を貫き通したのは素晴らしい。 特に音楽の使い方(ガンダムシリーズが一番損をしているポイント)。 シン・ゴジラにも使われた例の音楽はココが最適という箇所で使われる。 TVシリーズで多用されていた<暢気な日常のテーマ>スローバージョンに涙腺が緩む(中盤パート)。 冒頭の戦闘シーンのラテン風の音楽もアタマの爪弾くギターから最後まで印象的(多分新作)。 Qを観て気になった以下に関する明確な説明はなかった。 ①シンジが14年間目覚めなかった理由、年を取らなかった理由(シンジも造られたヒト?) ②ミサトのシンジに対する内的心境変化(Qで厳しく接したのはシンジを生かす為?) ③ネルフ分裂のいきさつ マジンガーZから約50年、巨大ロボットアニメが到達したひとつの頂点。 新世紀エヴァンゲリオン 作品データ

北野武「ソナチネ」雑感

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北野武「ソナチネ」1993年公開 音楽、ムード、独特なカメラ・編集。 誰もいない浜辺での戯れ。 沖縄パートは2作目「3-4x10月」に共通する要素。 無意識で繋いで結果的に成立しているかのような独特なスタイル。 北野武監督作品は、封切られるとすぐに、渋谷の映画館で観た。 1作目の「 その男、凶暴につき」から7作目の「 HANA-BI」までは、 コメディ方向におもいきり舵を切った「 みんな〜やってるか!」以外は面白く観た。 ただ、具体的にどこが良かったか、と言えば、久石譲が音楽を担当した作品は音楽が良い、とは言えるが、後は、なんとなくムードが良い、としか言えない。 1作目の「 その男、凶暴につき」は久石譲の音楽ではないが、サティのあの音楽で、ただ歩いてくるショットが、なんとなくムードが良いのである。 今作もそうだが、そもそも、本筋のストーリーは殆ど覚えていない。 今作の海辺の相撲とか、海辺の野球とか、サーフボードの後ろをちょこんと持つ、など、 そういう本筋のストーリーとは関係がない所が妙に印象に残る。 記憶では、そのシーンでは、必ず 久石譲の印象的な音楽が流れている。 言葉で説明できる面白さなら小説を読めば良い。 映画の根本の魅力は、言葉では説明できない音楽・音響、ムード、 画の力などにある。 「 菊次郎の夏」と「 BROTHER」でマンネリを感じて映画館で観るのはしばらくやめていたが、 多分レンタルDVDで観た「 Dolls」「 TAKESHIS'」は新境地も感じられて悪くなかった。 ソナチネ 作品データ ビートたけし プロフィール

Denis Villeneuve「メッセージ」雑感

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Denis Villeneuve「メッセージ」 2017年公開 Netflix配信中(2021.03.10現在) タコ型異星人とのファーストコンタクト。 結局はハリウッドエンタメなのかな? と思って見始めたら、 この手の作品としては珍しく、最後まで心理劇。 「インディペンデンス・デイ」的な派手なアクションシンーンは一切ない。 一種のタイムリープは超能力ではなく、 異星人の言語を学ぶ事によって、 時間に関する思考が変わる事で身に付くようだ。 肉体ではなく意識がタイムリープしているように見える描写。 映像表現としては単にショットが切り替わっているが、 実際に体験している主人公のその瞬間の体感としては、 ARで現実と仮想を同時に見ているような感覚なのだろうか? 硬質な画で淡々と展開。 暗めの画の美しさ。 メッセージ 作品データ

渡辺歩「海獣の子供」雑感

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渡辺歩「海獣の子供」2019年公開 Netflix配信中(2021.03.10現在) 何が起きるか予想できない長い夏休み。 海、宇宙、太古から続く記憶、種の進化。 小さな海辺の町から展開する「2001年宇宙の旅」。 スターゲイト風圧倒的描写で全ての根源に迫るのは悪くないのだが、 「海がある星は子宮、隕石は精子」は台詞で言わせなくても良かったような。 この台詞を含めて大人の台詞は若干説明過多な趣。 音楽は久石譲にしてはあまりメロディーが印象に残らない。 特に<祭り>のシーンの音楽。 このシーンにかかる伴奏音楽としては決して間違いではないのだが、 メロディ自体に意味があると思えるような耳に残るメロディではない。 劇場公開時にあと6で宇多丸さんが結構ホメていた気がするが、 具体的にどこをホメていたかはほぼ忘却の彼方。 アニメーションとしての表現力のようなものをホメていたような…。 目が大きすぎるキャラデザはどうにも生理的に苦手。 「鬼滅の刃」も見ているうちに馴れて来たので、 なるべくキャラの目を見ないようにするが、 結構クロウスアップが多い。 目が大きすぎる顔はクロウスアップだとちょっと怖い。 海獣の子供 作品データ

市川崑「果てしなき情熱 」雑感

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市川崑「果てしなき情熱」1949年公開 U-NEXT配信中(2021.03.11現在) U-NEXTの説明「全編を昭和歌謡で彩りながら紡がれる恋愛ドラマ」を読んで、 陽気な音楽劇、ひょっとしたらミュージカル? と思って見たら、全然違っていて、 主役の 堀雄二が最初から最初まで延々とウジウジ悩み続ける、 ひたすら暗〜い映画だった。 冒頭に「服部良一の半生記ではない」という但し書きが表示されるのは、 服部良一が「僕の 半生記と思われたら困る」とクレームを入れたからではないか、と想像。 堀雄二のささやくようなモノローグは非常に聞き取りにくい。 なんとなく「 失われた週末」を想起。 笠置シヅ子、山口淑子、淡谷のり子の歌はとってつけたように挿入されていて、 笠置シヅ子はストーリーに絡むが、 山口淑子、淡谷のり子は歌のみの出演。 映画.comのキャストデータ、小田切優子=月丘夢路は誤りと思われる。 https://eiga.com/movie/38789/ 果てしなき情熱 作品データ