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7月, 2022の投稿を表示しています

加藤シゲアキ「オルタネード」読書メモ

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加藤シゲアキ「オルタネード」新潮社 2020年 週刊誌やSNSで刊行当初から結構話題になっていて、ラジオで宇多丸さんがホメていたので読んでみた(加藤シゲアキ氏の作品は初めて読む)が、アイドルが余技で書いたとはとても思えない、ちゃんとした青春群像小説だった。 青春と人生を桜の花びらにたとえたラスト3行(いま光を浴びている花びらは風でどこか遠くに運ばれてやがて落ちて土に還る)の途中、「土はやがて根に触れるだろう。それが何の根であるかは知る由もない」の部分、なければなくても成立するようにも思えるこの文章で、どこか不気味で不思議な読後感が惹起する。独特な感性。 高校生の悩みと言えば、恋愛・友情・家族・進路と大体相場は決まっていて、3人の主要人物は、各々バランスは異なるが、上記の問題をそれなりに抱えている。定型と言えば定型なストーリーのアクセントになっているのが、特殊設定・高校生専用SNS「オルタネード」。このアイディアは、惜しむべくは、もう一歩、何かしらプラスアルファが欲しかった。例えば、使用派vs否定派の争いに、アナログ世代の僕には想像もできない、デジタル世代ならではの展開を期待したが、そのあたりはあまり深堀りしていく方向ではなかった。 僕のような年齢になると(僕だけかもしれないが)とにかく人物名が覚えられない。エピドードは覚えていられるのだが、それが人物名と一致しない。複雑な推理モノは、昔から人物名と行動をメモしながら読んでいたが、遂にこういう普通の話でも、ある程度の人数が登場する小説はメモを取りながらでないといけない記憶力になってしまったようだ。尚志と豊は、なんとなく勝手なイメージで、豊が関西弁のドラマーで、尚志がボンボンのバスケ&ギタリストな気がしてならなかった。 デジタルガジェットによる近未来の読書は、<人物名クリック>でその時点までの簡単な行動履歴表示、とかになってくれるのだろうか、と夢想。 初登場時には性別が判らない人物が読み進めるうちに女性と判るという人物が2名(笹川先生、ホルンのマコさん)登場するが、これは、昨今のジェンダー的な諸々を考慮した狙いなのだろうか? 個人的には(内面はともかく見た目の)おおまかな年齢や性別が、初登場時に判っていた方が(画が浮かぶので)読み進めやすいのだが。

中野明「裸はいつから恥ずかしくなったのか」読書メモ

中野明「裸はいつから恥ずかしくなったのか」2016年 ちくま文庫 裸を見られる事が恥ずかしい、という概念は、<本能>ではなく、ある意味では<文化>であるという事はなんとなく判ってはいたが、明治のある時点までは、女性の上半身裸がここまで日常的によくある風景だった、という事は知らなかった。明治初期以前を描いている映像作品は、現在の感覚に則って、現在と同じような羞恥心があるように描かれている事が殆どではないだろうか? 重要なのは、明治時代のある時点までは、裸=性的対象ではなかった、という事。 心の奥でどう考えていたかは人それぞれだろうが、少なくとも、社会全体の暗黙の了解としては、裸=顔の延長=日常的によく目にするものだった、という点。 脳化社会論によれば、裸体を隠す社会の限界を察知した脳が、行き過ぎた裸体の隠蔽を和らげるために混浴文化を復活させた、という説は興味深い(P252) ※2012.12.01追記 ドイツ・ハノーファーは入浴規制を改正、市営プールで女性や第3の性の人が上半身裸で泳ぐ事が可能になる

野球に関するあれこれ

野球に関するあれこれ ○打者にとっての最大のミスは打てそうな球を見逃すこと ○投手にとっての最大のミスはリードしている状況で四球連発後に同点打・逆転打を打たれること ◯打者は打てそうな球をどんどん振って最終的に4〜6得点以上を目指す ◯投手はゾーン近辺に自分の武器をどんどん投げて勝負して1試合で3〜5失点以下を目指す ◯投手はどんどんゾーンに投げ込み、打者はどんどん打って、6-3で勝利する事を目指す野球が理想 ◯ゾーンにしっかり投げ込んだ球を完璧に捉えられるソロ本塁打は1試合3〜4本ならOK。四球連発で走者をためて苦し紛れのストライクを長打されるのはダメ。 ◯スターターは6回3失点以内、リード状況のブルペンは成功率.750以上を目指す(成功=リード状況維持) ◯「本塁打が出れば同点または逆転」という状況を9回に作れれば、その試合は(少なくともプロスポーツの興行としては)成功。その為には悪くても3〜4点差以内で9回を迎えたい。 ◯単打が3本連続で出ても1点も入らない場合があるが、2塁打が3本連続で出れば(走塁ミスが無い限り)必ず2点、本塁打が3本連続で出れば必ず3点入る。MLBで主流の1〜3番に長距離打者を並べる打線(長距離打者にできるだけ多くの打席を与える打線)は同一イニングに3点以上取る事を目指す為には正解。NPBで主流の1番走力、2番小技、3〜5番に長距離打者という打線は、盗塁・エンドラン・バントを使ってそのイニングに1点を取る為には有効かもしれないが、最終的に3〜6点を取る為に有効かどうかは疑問。 ◯序盤(特に初回)に犠牲バントを使う戦術は基本的に疑問。初回は投手の制球が安定しない可能性が高い。制球が安定する前に打てそうな球をどんどん打って3点以上取る事を目指す野球を支持。初回に犠牲バントで1点は逆に自軍先発投手のプレッシャーになりかねない(大事に1点を取る=大事に1点を守る心理)。犠牲バントは基本的に1点勝負の最終盤だけで良い(後攻なら8裏以降)。 ◯上記の観点から理想の打順(2022/9/12更新) ①吉川 ②中田 ③丸 ④ウォーカーorポランコ ⑤岡本or大城or坂本 ①吉川は現状では長打力はいまいちだが走力から、理想の1番は走力と高い出塁率を持つ中距離打者(20本前後期待、ex.イチロー,松井稼,秋山,高橋慶,立浪,新庄) ⑥⑦⑧は直近の調子や先発投手

本橋信宏「渋谷 円山町 迷宮の花街」読書メモ

本橋信宏「渋谷 円山町 迷宮の花街」宝島社 2015年発行 302頁 「迷宮の花街」の話はごくわずか。 花街としての歴史をもっと深堀りして欲しかった。 後半は期待していなかった話が増えてくる。 東電OL殺人事件の話はそれなりに興味深かったのだが、これは、別の1冊にまとめてくれた方が良かった。 最後の方の遊び人の女性インタビュー、どの人も同じような口調で同じような話。 浮気をしないではいられない心理にとことん突っ込んでいくわけでもなく。 文章は簡潔で読みやすくて若干深みもある。

田中宏幸「教えずに育てる」読書メモ

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田中宏幸「教えずに育てる」ダイヤモンド社 2021年発行 田中宏幸氏は京都橘吹奏楽部顧問(1995年就任、2018年退職) rose parade2018で前の方でニコニコ手を降っているメガネとヒゲの人。 一番期待していたのは、伝説の振付が生まれる過程や具体的な諸々だったのが、その部分に関する具体的な話は殆どない。 全編各論でこの本全体を貫く物語はないので読み応えはあまりない。 さわりだけを聞かされる落語のような。 同じような趣旨の話が延々続くのでだんだん飽きてくる。 この本によると振付は全て生徒が考えているらしい。 本当に外部の大人のアドバイスなしなのだろうか? マーチング構成係=ドラムメジャーと各パート代表(計5人)が、構成・演技・コンテを考えて3年生に伝えて、3年生が下級生を指導する、との事。 ※各パート=金管楽器、木管楽器、打楽器、カラーガード ※カラーガード=旗やバトンを持ってる人 ※ドラムメジャーはバンドのリーダー(多分パレードの先頭でバトンを持っている人) ※部活動のリーダーは3人の総務(部長1副部長2)

Netflix「ストレンジャー・シングス」シーズン4 雑感

Netflix「ストレンジャー・シングス」シーズン4 劇中年代はシーズン1の3年後(1986年)という設定だが、実際は6年経っているので主人公たちの15歳前後設定はちょっとキツい(特にマイク役)。実際は20代後半のジョナサン役とナンシー役の10代後半設定は相当キツい。 ドラマシリーズの1話は45分でもちょっと長い、35分前後で充分、と思っているので、今シリーズの各話ほぼ70分以上はいかにも長い。各話に冗長に感じる部分が数ヵ所ある。 今シリーズの基本構成は一度別れていた仲間が再集結する話、再特訓して力を取り戻す話。基本的によくある話なので細部を膨らませるのは別に良いのだが、配信なのだからどう編集しても良いのを長尺にまとめる必然性が判らない。見る側としては話数が増えても、1話の長さは40分前後が望ましい。ひょっとして演者のギャラの問題?(1話ごとの計算) 第8話はさらに伸びて85分、ひとつの話にまとめる必然性があるようには思えず、1〜7話に比べてさらに冗長に感じた。イレブンがいる施設が別の勢力に襲われる最後の方まで、ほぼ準備と説明だけの展開。 ミドルティーンの頃は相当にattractiveだったWinona Ryder、イジリの問題なのか、目のあたりが不自然で顔がとても怖く見える。署長とWinona Ryderの話は別になくてもいい、あってもせいぜいコメディリリーフ的扱いで良いのではないか、と最初からずっと感じているのだが、今シリーズでも最後の重要な所に絡んできそう。 第9話(シーズン4最終話)は、最近は映画でも長く感じる150分というありえない長尺。これまでの70分以上の回と同様、1話40分程度になるように分割しても特に問題がないように感じた。 今シリーズは長い割にはコミカルな部分は減った印象。前シリーズのリッジモンドハイなプールのような判りやすい笑えるシーンはなかったようだ。愛と友情が奇跡を呼ぶ少年ジャンプ的な(とりあえずの)勝利自体は別に悪くはないのだが、そこに至るまでが冗長で、EP8レイ&ルーク問題(戦っている者の実体はその場にいない)もあって、どーんと盛り上がる感じではなかった。 最後の方で影の主人公のように署長が戻ってきて場をさらうような過剰演出。署長はこんなに重要キャラでなくてもいい(あえて言えばいなくてもいい)という感想はシーズン1からずっと変わ