赤松啓介「夜這いの性愛論」感想メモ

赤松啓介「夜這いの性愛論」1994年 明石書店

一読して内容の信頼性に迷う。
筆者が実際に経験したように書いてある事は一応事実だとしても、それがどの程度一般に敷衍する事象とイコールなのか、この本だけではよく判らない。みんながみんなやっている事なのか、それとも、やっている人はやっている事なのか?

思いつくままに書き散らしているようにも思える構成。
同じような話が何度か繰り返される。
中盤は「性」に関する話は殆どなく、底辺で働く奉公人に関する細かい話。

全体的に雑多な記憶と知識が散りばめられているだけ。
田舎でも都市でも色々なやり方で、男も女も色々やっていたらしい、という事は伺えるが、
「性愛論」と呼べる程の体系的な記述ではない。「……論」というからには、少なくとも数十人単位で詳細な聞き取り調査をして、例えば地域別に整理・分類しているのかと期待したが、全編どこの誰が言っているのか判らない曖昧な話の羅列。著者自身の経験なのか誰かの経験なのか曖昧な記述も多い。せめて著者の個人的経験レベルでも、「夜這い」「雑魚寝」「無礼講」など具体的な<性愛>の具体的行動の描写(体験・目撃)に期待しても、その辺りは「とても具体的な言葉にできない」と言った表現で逃げる。

この本に書かれているような事を実際に経験した人、この本に書かれている事に関する知識が豊富な人は、楽しく読めるかもしれないが、タイトルに釣られて、ちゃんとした知識を得たくて読んだ人(僕の事)にとっては、やや物足りなく、どこまで本当か判らない過去の自慢話と昔話にしか読めない、と言えなくもない。大正末期〜昭和初期に関して、この手の話をフィクションとして書く時のちょっとした参考文献にはなりそう。




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