磯村一路「がんばっていきまっしょい」雑感

 磯村一路「がんばっていきまっしょい」1998年公開

美しい海、規則正しい掛け声。
使われている音楽はほぼ全部なかなか良い。

当時の流行語も取り入れた「アイコ十六歳」は「現在進行系の青春」だが、この作品は「郷愁としての青春」を描いている。使われなくなっている現在の部室を描く冒頭のシーンが補強、初見では伝わりにくいか?

①女子ボート部設立とその歩み
②コーチが次第に心を開く
③主人公と幼馴染みの淡い恋

大きくまとめるとと3つある話のうち、②に関してはそこそこ語られているが、①と②は、ドラマティックに盛り上げようと思えばいくらでもできそうな話を、あえて抑制して語っている。レース映画にはつきものの「勝つのはどっちカットバック」もない。

繰り返されるキャッチ・ローの掛け声とともにボートが進んで万燈会がオーバーラップしてくるショット(93分頃)、例によってその魅力は言葉では説明しがたいが、あえて陳腐に読み解けば、人生とは、たまたま乗り合わせた船を誰かと一緒に進めて行くが、気がつけば自分も他の人もいなくなっている(死)…それでも、特に若い時に小さな船に乗り合わせて濃密な時間を一緒に過ごした記憶がある人は幸福なのだ。

夏の終りの空いている映画館でひとりで観てじっくりムードに浸りたい作品。

演出なのか、たまたまなのか、高校生を演じている俳優たちの演技は、よくいえば素朴、悪く言えば棒読みなのだが、当時の流行語を排除した方言の台詞は妙に響く。演技でここまでのレべルはなかなかない「スパート」の絶叫(漕がないので声を出すしかない、途中から声が枯れる)。









がんばっていきまっしょい作品データ

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