「日本沈没2020」雑感

 「日本沈没2020」Netflix(全10話)

ディザスターモノの割に各キャラの切実感がいまいち伝わってこない。全10話の尺の割にはボリューム感が薄く、ゲーム的なムードに終始して、水増しされた総集編を見たような印象。

僕が見落としていただけかもしれないが、常に主人公側の視点で展開して、政府・公共機関サイドや世界各国の対応(葛藤)は描かれなかったようだ。ディザスターモノの従来のパターンをあえて避けて、日常系・セカイ系で描く試みだったのかもしれないが、それにしてはキャラが弱い。

最大の問題は各キャラの前フリ。ひとつひとつのエピソードが点としてバラバラに存在してその瞬間の感情リアクションもバラバラに存在していて、一貫した流れ、全体を通した明確な成長は感じられなかった。

父親と有毒ガスで死んだ女性の描き方には唐突感があったが、後半に行くほど、死ぬキャラの描き方はもったいぶった描き方になる。総じて話が進むに連れて展開がもっさりしてきて、これぞクライマックスと呼ぶべき大きなクライマックスはない。

全然ダメでもないが強烈に迫って来る部分が薄く、作品が指向する明確な世界観・方向性が伝わってこないという意味では「全裸監督」と似たような印象を持ったが、逆にこういう作品の方が世界展開で成功する確率が高い、という判断であえて狙ってやっているのかもしれない。ハリウッド的な明確さをあえて避けて日本的曖昧さを際立たせて、行間は視聴者の補完に委ねる方法論。

少女漫画風の目が大きすぎるキャラデザではなく、素朴な絵柄だったので、途中で嫌になる事はなかった(「鬼滅の刃」はどうしてもキャラデザに馴染めなくて早々にギブw)。

最終話、クラウドの話以降は真剣に見ていたら飛ばしたくなる程冗長(長過ぎるエピローグ)。義肢を装着して陸上をやる最終着地点そのものは悪くないのだが、主人公の陸上に対する拘りや葛藤の前フリが足りないので60点の模範解答を見せられているような印象。

(エンタメに関しては)古典的常套・ハリウッド的明快を愛する僕は、陸上と家族を愛する良い子な主人公がいろいろな試練を乗り越えて生き延びた、という展開(主人公の明確な成長は判りずらい)より、どれだけありがちでも、「タイムが伸びなくて陸上を続けるかどうか悩んでいた」「両親に対する反抗期だった」といった王道な前フリがある(明確な成長が見える)展開を期待してしまう。

第6話のまばたきモールスの話、 地震が来るのが「いつ」なのか判らなければ確かな情報とは言えないと思うのだが、まばたきモールス解読にこんなに尺を取るなら「いつ? 」と訊かせて「すぐ?」というYESを貰う展開にでもすればいいのに、と感じた。



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