村上春樹「一人称単数」読書メモ

村上春樹「一人称単数」2020年発行 文藝春秋

全8作の短編集。
「共通テーマは死?」と思って読み進めるが、
明確に「死」が描かれているのは4番目まで。
5番目のヤクルトの話は父親とラインバック、
6番目の謝肉祭はシューマンの悪霊・自殺未遂、
7番目と8番目の話は文字面には「死」は描かれない。

小説としての濃度は7番目の猿の話で増加して、
8番目の話(特にラスト)で視界不良なレベルに達する。
1〜7番までなんとなく不思議な要素を含む話を連ねていたのは、
8番目の話のフリのように思えてしまった。

8番目の表題作「一人称単数」は、
村上春樹氏の多くの長編の世界観を簡潔かつ直截に凝縮。
日常のすぐ隣にある(或はレイヤー的に常在する)言葉で説明できない異世界。
私見ではデヴィッド・リンチ的世界観と相似形。
普段は見えないが、何かのきっかけで扉が開く。

最近は、多分自分自身の加齢による感性の変化で、
20代の頃のように村上春樹の小説にビンビン感応する、
という事はなくなってきているのだが、
あいかわらずどこか独特な文体・構成にそこそこひきこまれる。
読書のスタミナも年々衰えてて、
メモを摂りながら読まないと読むそばから忘れていくので、
いまやむしろ短編の方がありがたいかもしれない。

村上春樹プロフィール
作家(年齢順)



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