庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」

庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」中公文庫

17年ぶりに再読。
「ライ麦」っぽい感じ、という事以外、何もかも忘れていた。

「桃尻娘」と同様に告白体に近い一人称。
由美の母親の曖昧な言い方など、台詞は面白いのだが、会話自体が多くない。

朝にガールフレンドとケンカして夕方に仲直りする1日の話(1969年2月9日)。
この間に「白衣の下は全裸の女医」「小林が来て一方的に語る話」「銀座で小さな女の子に足を踏まれる話」などの「現在(眼の前で起きている出来事とリアクション)」が入るが、大半は「過去の出来事のふりかえり」か「熟考された意見や思想の表明」。「桃尻娘」の1作目の5作品はほぼ全編「現在(眼の前で起きている出来事とリアクション)」を語っているがこの5作はいずれも短編。このような普通の「青春の1日」を題材にして、ある程度の長さでほぼ全編「現在」というのは意外に難しい(プラス実は読みにくい?)のかもしれない。

小さな女の子に足を踏まれる話の不自然さ(声を発したわけでもないのに女の子はなぜ痛がっている事に気付いた?「だいじょうぶ」と答えたにも関わらずなぜ離れようとしなかった?)は、魂が共鳴しあう相手との奇跡的な出会いを秘かに際立たせる為に、狙って不自然に思える描写をしているのだろうか?

自分も悩んでいる時期(20歳前後)に読んで主人公と一緒に悩むのが、この作品にもっと寄り添う読み方。50歳を過ぎたいま読むと、当時の自分を思い出しもするが、このように悩んでいる若者に対しては、「若いうちにやった方が楽しい事をやって方がいいよ。どっちにしたって気がついたら青春は終わってるんだから」と言いたくなる。こんな事を言いたい心境になっている事は紛れもなくとっくに青春が過ぎ去った証拠なのだろうw

登場人物
薫 主人公 上にきょうだい4人 東大法学部進学をやめる
由美 ガールフレンド 幼馴染み
松岡 女の子を紹介してくれる(便利すぎるキャラクター)
小林 慶応大学志望 一方的長台詞 影の主人公




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