安彦良和「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」雑感

安彦良和「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」TOHOシネマズ六本木ヒルズ

直前に観た「トップガン マーヴェリック」は、どこを切ってもいかにも映画らしい、骨太で魅力的な作品だったが、こっちは何から何まで映画っぽくない残念な作品だった。    

特にダメなのはストーリーの流れ。
うまく言葉で説明できないのだが、映画的な流れ、波、リズム感がない。
殆ど全てのシーンがバラバラに存在して、とってつけたような音楽が流れている感じ。
ファーストガンダムのリアレンジされた音楽がかかっても、そこに至る流れが悪いので殆どときめかない。

安彦良和自身がコンテを切って音楽の使い方を決めているのだとすれば、厳しい言い方をすれば、安彦良和には映画的センスというものが圧倒的に不足しているのではないだろうか。
もしくは僕が映画的と感じるものと安彦のそれは全く異なるのか。絵そのものはキレイではあるが、絵が動く楽しさ(アニメ的なハッタリ)があるショットは殆どなかった印象。マンガ作品には印象的なカットがたくさんあった気がするので、安彦良和の一番資質が生きるのは、人物の止め絵なのかもしれない(原画向きの才能)。

監督(安彦良和)、副監督(イムガヒ)、脚本(根元歳三)の誰に一番の責任があるのか判らないが、この程度の作品しか作れないのなら、作らない方がマシだった気さえする駄作。
テレビ版の方が(絵は最低だったが)話自体はまだマシだったような気がする。

開始からしばらくの間は、ファーストガンダムの<新作>を40年ぶりに映画館で観ている、という感傷的な気分があったのだが、それが持続したのはせいぜい15分程度。
殆どのキャラが声が違うので当時観ていたのと同じ人物には感じられず。
セイラ・マスは井上遥とはかなり違う声・発声。
マ・クベはオリジナルには及ばないものの悪くない。
ゴップとエルランはごくごく普通の発声で独特の味が薄れた感じ。

テレビシリーズでも映画版でも殆ど活躍する場面がなかったジョブ・ジョンにたくさん台詞があったのは良かった。できればオムルもコパイで連れて行って欲しかった。

公開初日の3回目の回はガラガラだった(多分客数10人程度)。

※2022.06.05追記
テレビ版をほぼ当時ぶりに見返してみたがテレビ版もそれほどでもなかった。
中盤のこの辺りの回は、スポンサー(おもちゃ会社)から「コアファイターが活躍する展開がある話」「コアファイターが変形・合体してガンダムになる展開がある話」を作ってくれ、という要望があったのではないかと想像する。

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