浅田次郎「地下鉄に乗って」読書メモ
浅田次郎「地下鉄に乗って」講談社文庫 1999年発行
24年前(1997年)に1回読んでいるが、地下鉄に乗って? タイムスリップするという設定以外、殆ど何も覚えていなかった。
同じような設定の近作「おもかげ」に比べると、何の話か判りにくい。
何度も過去に飛んで何度も過去の父親に会うが、現在では一度も父親に会わない。
「過去の判明」は、知らなかった過去が判明した事によって現在の主人公の状況が変わるのが王道の展開。この話に当てはめれば、過去の父親に会った事で、現在の父親に対する認識・関係性が変わるのが王道。現在の父親と対面しないのは非常に不自然に感じられる。
王道の展開をあえて避けて描きたかったのは何か? と問われるとそこはよく判らなかった。
脇役かと思っていた愛人(みち子)が一番劇的な行動をする。
過去の世界で自らを殺す(一種の自殺)。
その行動に至るみち子の心境は全く判らなかった(何かを読み落としていたか?)
跳ぶ先の時代の中で一番の近過去で自殺する兄の心境、またしかり。
「記憶という暗い流れの中で、
孤独な人間を乗せて行きつ戻りつしている小舟が、
時間というものの正体だ」(P36)
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