「STAR WARS EP8 最後のジェダイ」


「STAR WARS EP8 最後のジェダイ」

EP6は83年公開当時の初見の感想は大失望だった(完結編なのに戦闘シーンしょぼい、帝国軍のウォーカーが丸太でつぶされるって!? 、皇帝あっさり死にすぎ、これで全て終了のラストシーンが村祭り!? )が、何度も見返すうちにだんだん好きになったので、今作も何度か見返すうちにそうなるかもしれないが、とりあえず初見直後の今はもやもや感の方が圧倒的に強い。
※EP6の<ラストシーンが村祭り>は、最新版では銀河中で勝利を祝うモンタージュに修正され、音楽も村祭り風からフィナーレ風に変わり、霊体アナキンも登場して霊体3人勢揃いになった(霊体勢揃いにはできればクワイガンもいて欲しかった)

①ルーク
ルークが死んでしまった、という喪失感もあるが、最後の戦いが<実体>でなかった事は大いに不満。EP7のハン・ソロは何はともあれ直接対決していた。これなら最初から実は無敵でマトリックス的にレンの攻撃を避ける必要もなかった(観客を驚かせる為だけの1回限りのハッタリ演出)。
EP7のハン・ソロに比べてコレといったルークらしい見せ場もなく、あの星に隠遁している理由もよく判らず、カイロ・レンに関する話も納得できる話ではなかった。
<昔の話を画で見せる>のはやはりSTAR WARSっぽくない。EP1〜EP6は全てが現在進行形でこういうショット・シーンは皆無の筈。前作の「燃える村を見るルークとR2」はJ.J.だけにフラッシュフォワード(予知夢的な映像)なのかと思っていた。
あえて言えば霊体ヨーダに「young skywalker」と呼びかけられて会話するシーンはちょっとルークっぽい感じはあった。
レイが差し出したライトセーバーを受け取ったルークはそれをポイっと投げ捨てる。この行為はEP6のラストのルークには全く結びつかない。ベン・ソロがダークサイドに堕ちた事がルークを変えたという事なのだろうが、そこが納得できる形では描かれていなかったし、そこまで変わってしまったルークが昔のルークに戻った明確なきっかけもはっきり判る形では描かれていなかった(R2が映し出したレイアのビデオメッセージで心変わりなのだとしたらあまりにも安易)。いずれにしても最後の行動に繋がる正しい最初の行動は「ライトセーバーを受け取って逡巡」であるべきだったと思う(<ポイっと投げ捨てる>も観客の予想を裏切る為だけのハッタリ演出)。

②レイア
レイアの危機(レジスタンスの危機)を救う為にルークが還って来る、という根本のストーリーは良いと思う(海に沈めていたXウイングにR2を乗せて実体で還って来てほしかったが)のだが、前半のレイアの不死身設定? (宇宙空間に放り出されても死なず、自力で戻ってくる)はこの根本のストーリーに対しては逆効果だし、そもそもこのくだりは何の為に必要だったのかよく判らない(こんな事ができるならレイア自身がキャプテン・マーベル風に戦う事も可能なのか?と思ってしまう)。こんなシーンを作るくらいなら、レイアがライトセーバーで戦うシーンを見たかった。これも上記のルークのシーンと同じで、単に観客を1回だけ驚かせる為の演出(シリーズ全体における無駄なフォースのインフレ化)にしか感じられなかった。
今作で誰かが死ぬとしたらレイアだと思っていたのだがレイアは生き残った。EP9はどうするんだろう? 時間経過してその間に死んだ事にするのか?

③ONE FOR ALL
巻頭の戦い(爆撃ボタン)、司令官(Laura Dern)の単独特攻(ヤマトか!)、最後のルーク。この3つはいずれも「多くを助ける為にひとりが死ぬ」という行為が英雄的に描かれている。一応争い事が描かれているので犠牲者が出るのは仕方がないが「多くを助ける為にひとりが死ぬ」という行為が英雄的に描かれるのは、物語としてどうも好きになれない(単純に好みの問題)。「ローグ・ワン」が好きになれないのもこれが理由。

④世界観
過去作は「良い方」(共和国・反乱同盟軍・レジスタンス)も「悪い方」(シス・帝国・ファーストオーダー)も関係なく、たくましく或はだらしなく生きている商人・ガラクタ拾い・バーの客・ゴロツキなどが(ストーリーと関係なく)描かれていて、それはSTAR WARSの魅力の相当部分を影で支えていたのだが、今作はあえて言えばコードブレイカーを探しに行くカジノがそれなのだが意味合いが違う。
「ここにいる人たちは戦争で稼いでいる(悪い)奴ら」と単純化されている。
「良い方」「悪い方」「戦争で稼ぐ人」「戦争で虐げられる人」と世界が単純化されているように見える。
銀河は広大で色々な人が色々な思惑で生きていて、共和国系vs帝国系の争いに関係なく(楽しく?)生きている人がたくさんいる(ように思える)EP1〜EP7の世界観が好きだったのだが、それが急に単純化された印象。
「ここにいる人たちは戦争で稼いでいる(悪い)奴ら」みたいな台詞がなく、カジノにもっと陽気な音楽(ex.モスアイズリーの酒場)が流れていて、コードブレイカーがBenicio del Toroではなくホンジョーみたいな人間型クリーチャーだったら、全然違った印象になったと思う。実は1番深い部分で落胆が大きいポイントかもしれない。
※この種の人々の描写はEP3はなかった? (要確認)

⑤その他の不満・疑問など
・スノークあっさり死にすぎ(カイロ・レンいつの間に強くなった!?)
・射程距離問題がよく判らない(その後の輸送艇はバンバン撃たれていた)
・レジスタンスの行動が単純すぎる(全組織全人員がひとつの艦隊に集合!?)
・ベン・ソロはなぜ暗黒面に堕ちてカイロ・レンを名乗るようになった?
 スノークの正体(出自)とともに描かれるかと思ったが不明のまま
・レイがジャクーに帰りたがっていた理由は?(両親は既に死亡)
・これは何度も見直さないと判断できないが、過去作と比べて編集の方法論が変わった気がする(緩急のつけ方、音楽の使い方、ワイプの使い方)
・ルークとレイの話がグダグダしていて射程距離問題がよく判らないので中盤冗長
 STAR WARSで始めて味わう冗長感

僕にとってのSTAR WARS最大の魅力は、単純な既視感のあるストーリーを広がりのある世界観で冒険活劇的にスピーディーに語る方法論(ストーリーよりもスピード感と世界観、観ている間は展開の速さで疑問点や矛盾点を置き去りにする)にあったのだが、その方向性は前作で終了で、今作からはこの次の新3部作もふまえて、ある程度別の方向性に舵を切ったのかもしれない。メイン(3部作系)は二元論に近づけて、スピンオフやTVシリーズの方で多様性を見せる方向に向かう可能性も考えられる。
 
EP8でもっとも揺さぶられたのはエンドロールの「in memory of carrie fisher」が表示されていた部分のピアノソロ。ここは涙が出そうだった。

※2007.12.17追記
宇多丸さんは声を荒げるほどに超批判的だったw
以下、宇多丸さんの主な批判ポイント(いすれも同感)
①映画作品としてグダグダの部分が多すぎる
②今回のレジスタンスのやっている事は全部バカ(長い上映時間の殆どの時間がレジスタンスの無為無策の自業自得)
③レイとルークがまともな師弟関係を結んでいない(レイがキャラクターとして成長していない)
④新しい印象的な音楽がひとつもない
⑤EP6でルークが成し遂げた事に対するリスペクトがなさすぎる
マーク・ハミルは監督に「君の脚本のルークの行動には全く納得できないがベストは尽くすよ」と言った由

STAR WARSの登場人物






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