Nick Castle「ミリィ 少年は空を飛んだ」

Nick Castle「ミリィ 少年は空を飛んだ」1986年 DVD

レンタルビデオ、DVD購入時と2回は見ている筈なのに、「実際に飛べる話」だった事を忘れていた。ヒロインの少女(ミリィ)が魅力的なので個人的には全然OKだが、冷静にストーリーを振り返ると、少女と少女の家族側から見れば、ラストのモノローグで説明されるようにきちんと成立しているが、自閉症の少年側から見れば「少年は何をしたかったのか?」がいまいち不明瞭。

前半は、ミもフタもない言い方をすれば、こんなかわいい女の子に毎日かまって貰えたら、そりゃあ自閉症も治っていくだろうという展開で、次第に少年が心を開いてゆく。
「少年の自閉症が治る事が少女側の問題解決にもつながる話」なのかと思いきや、
病室から一緒に夜の街を飛ぶミッドポイント(この時点では夢と解釈できる作り)以降は違う展開になる。

ざっくり言えば、後半は、収容された施設から脱走した少年がミリィと合流、ミリィと少年を探す大人とおいかけっこがあって屋上に追い詰められ、ふたりで一緒に実際に飛ぶ。少年はミリィを自宅まで送り届けて空の彼方にウルトラマンのように飛び去って行く。

なんとなく少女側視点で見れば別に問題ない話なのだが、少年側の視点で見ると、
◯少年が欲しいモノは何だったのか?
◯少年はいつでも飛べたのか?
という疑問が湧いて来る。

少年が欲しいモノ=ミリィとの心の交流で、実は最初から自由に飛べたのなら、中盤のフライングデートは少年にとっての殆ど最高到達点。

少年が飛べる条件を「ミリィが危機に陥った時」と明確に設定付けして、最後に大きな危機を救って少年は死ぬ(両親の元に行く)にすればもっと収まったのではないか。

特殊能力を題材にする時は、何かしら能力に関する縛りが絶対に必要だと思う。

少年側の事情を深く考えずになんとなくヒロインを眺める分には充分魅力的な佳作。いまの感覚で見ると全体的にやや冗長(特に後半)。きびきび切れば15分は縮められそう。

ヒロインLucy Deakins(1971年誕生)は相当にattractiveな美少女。Lucy Deakinsを眺めていれば上記のストーリー上の難点は見ている間は気にならない。角度によってはファルコンっぽいのも愛嬌のうち(鼻の下の部分が少し長め)。
母親は「ダイ・ハード」のBonnie Bedelia。

※追記
脚本上は「少年が飛べるのはヒロインが窮地に陥った時だけ」と設定されていた、という解釈もできなくはない。この場合、少年が実際に飛んだのはラストのみ(または花を摘もうとして落下した時とラストのみ)で、病室からのフライングデートは夢だったという解釈になるのだが、だとしてもラストは少女の危機としては弱い(少女は何が何でも逃げる必要に迫られてはいない)。

※追記2
少年が求めていたのは「他の人がたくさん見ている状況で好きな女の子と一緒に飛ぶこと」だったという解釈もできなくはない。何にしても少年が言葉を話すのは最後の「ミリィ アイラブユー グッドバイ」だけなので推し量る事しかできない。

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