木下恵介「カルメン故郷に帰る」

木下恵介「カルメン故郷に帰る」1951年 Hulu

Huluの紹介は「カルメンが引き起こす騒動を描いた傑作コメディ!」だが、コミカルな効果を狙っていると思われる部分にはほぼ魅力を感じなかった。三井弘次の馬のギャグ(?)は蛇足に感じたほど。

そもそもこの作品はコメディなのか?
佐野周二がオルガンで歌うマイナー調の曲が醸し出すセンチメンタリズムが主調ではないのか?

全体的にドラマ部分が物足りない。
坂本武とデコちゃんの親子はもっと直接対決するべきでは?(香盤表的モンダイか?)
日本初のカラー映画だが、フィルムの保存状態が悪いのか、常に画面にちらつきがあり、雄大な自然、空、山の美しさは味わえないコンディション。

高峰秀子は派手なメイクは似合わない。カラーで見慣れていないだけかもしれないが…。
全くの初見かと思っていたが、BSかWOWOWでやったのを部分的には見ていたようだ。
その時も「この高峰秀子のメイクは…」と感じていた事を思い出した。

××××××

部分的に再見してみたが、やはり芯となるストーリーが強度不足と感じた。
冒頭、坂本武は家出して東京でストリッパーをしている娘を断然快く思っていない。
こう始まったからには、親子ふたりが再会してぶつかって和解するかどうか、という話が基本線になるべきだと思うのだが、そうはならず、ふたりが出会うシーン(25分頃)はなんとなく和解してるようにも見える曖昧演出(ここは本筋から言えば断然大いに対立するべき所)。そもそも、坂本武と高峰秀子が一緒にいるシーンがこのワンシーンだけなのも不自然で、結果はどうあれ坂本武はストリップショーを見て(脱ぐ寸前で去る?)、その後別れのシーンで何らかの着地があるのが王道の展開で、やはり香盤表的モンダイを疑いたくもなる。

佐田啓二も何の為にいるキャラクターなのかいまいち不明瞭。

ストリップは芸術なのか? ストリップを「見る」事は果たして文化なのか? という底流モチーフも、視力を失って「見る」事ができない佐野周二との対比でもっと掘り下げられた。



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